今年度、一級鉄筋技能士と一級型枠技能士をW受験してきました。
技能士とは中央職業能力開発協会が実施する試験に合格することで取得できる資格です。
資格といってもいわゆる独占業務ではありません。
なのでこれと言ってできることが増えるわけではありませんが、私が数年間鉄筋コンクリート施工に関する業務に携わってきた証として取得したいと思いました。
今回は型枠技能士の方について触れたいと思います。

試験概要
技能士試験を受けるには実務経験が必要です。大卒ならば4年間その業務に従事しなければなりません。
試験に挑戦できるということ自体がこの仕事に従事してきたという証拠になります。
試験内容は学科試験、実技試験(計画立案等作業試験&製作等作業試験)です。
学科試験では型枠作業において必要な知識の他に、現場で作業するにあたっての安全衛生や関連するコンクリートについて問われます。
(過去問はこちらで公開されています。)
正誤&四肢択一問題のこともあり、勉強すれば一般の方でも解けるようになるレベルだと思います。しっかり業務に携わっていれば、ぶっつけでも受かるかも。
一級建築士の学科の勉強がほぼ包含しているのでよほどのことがない限り私は大丈夫です。
重要なのは実技試験ですね。
型枠施工技能士では実技試験は計画立案等作業と製作等作業の2種類あります。
どちらも油断できない試験となっています。
B47. 型枠施工(型枠工事作業)
1級 次に掲げる製作等作業試験及び計画立案等作業試験を行う。
(1) 製作等作業試験は、型起こし台(合板パネル)上に、基礎型枠の下ごしらえ及び組立てを行う。
標準時間 4時間40分 打切り時間 5時間
(2) 計画立案等作業試験は、躯体図及び仕様等に従い、型枠加工図(下ごしらえ図)に必要な寸法、パイプサポートの位置等を記入する。
試験時間 2時間
2級 次に掲げる製作等作業試験を行う。
型起こし台(合板パネル)上に、基礎型枠の下ごしらえ及び組立てを行う。
標準時間 4時間 打切り時間 4時間20分
D18. 型枠施工(型枠工事作業)
3級 次に掲げる製作等作業試験を行う。
型起こし台(合板パネル)上に、柱型枠の下ごしらえ及び組立てを行う。
標準時間 1時間40分 打切り時間 2時間
令和6年度(後期) 技能検定実技試験問題の概要 より引用
計画立案等作業試験では型枠の拾いについて問われ、大きく分けると二つの問題があります。


一方は型枠の形状が与えられて、その型枠が図面の中のどの場所で使われるものなのかを判断し、各所の寸法を穴埋めします。
1枚目の画像でいうと、上半分の問題ですね。
これが結構難しい。
選択問題ではなく計算した実値を記入して解答するので、実際に立つ型枠のイメージができないと手も足も出ません。
また断面図はほとんど用意されていないので各所のスラブ記号や梁記号をみて導きます。
取り合いも自分で決めるのではなく、指定されているのでしっかり読み取らないと一意の答えを出せません。
もう一方は、スラブ型枠で必要な支保工の拾いです。
条件としてパイプサポートやバタ角の寸法と本数を与えられ、全て使い切った配置で平面図に拾いをすることとされています。
また、支保工の組立て図も書きます。
これは本当に簡単というか、平面の配置に合わせて立面を書くだけです。
ただ、自分たちが普段作業している感覚では過不足を感じてしまうようなこともあるので混乱します。
そして製作等作業試験です。

独立ベースの型枠を加工から建て込みまで行います。
試験には作業手順が決められていて、前の手順に手戻りしてしまうと減点となるので確実に進めていかないといけません。
手順としては以下のようになっています。
桟木の原寸図作成→墨付け→下ごしらえ(切断・枠加工)→組み立て
試験問題には下ごしらえを終えてから組み立て作業に移行することという文言だけなので、実は組み立てまでは順不同かもしれません。
私は上司からそのように教わったので勘違いしているだけかも。
加工図が与えられているのでそれ通り製作するだけです。ただコンパネの各辺や使用する桟木の寸法は自分で割り出す必要があります。
次に、斜めにカットする桟木があるのですが、それらは原寸図を描きます。
私の周りではしばしば3Dカットというのですが、2方向に勾配のかかったものなんかもあります。
それらを三平方などを使って計算で割り出すのではなく、実際の寸法で紙に図を書いて測ることで必要な桟木の寸法を求めます。
そこまでシビアな精度である必要はないので建築大工と比べれば大したことありません。
他の級との比較
ちなみに、一級型枠施工技能士だけでなく二級、三級とあります。

三級は全く違う形で材料も全て加工済みで用意されているようです。
難易度は低いように思えますが制限時間が2時間なのがどれくらいなのか。

上の二級はというと一級の枠を半分に割ったような形でしょうか。
あんまり変わらないように思えるかもしれませんが、起こし台から垂直に立てられる枠がある点が組立の難易度を下げると思います。
また、斜めの形状が少ないため単純に加工の時間が短くなります。
制限時間の差は40分なので結構違いそうですね。
実技試験の詳細
試験問題は中央職業能力開発協会のサイトで公開されているのでそちらをご覧ください。
試験会場の様子です。
材料が各受験者のスペースに置かれていて、その与えられた材料の中で課題を製作します。


完成形はこんな感じです。
図面を見るとわかりますが、左右対称ではなく梁形が芯ずれしています。
そのため製作する型枠がそれぞれ違います。
墨付けや切断でミスがあると材料が足りなくなって詰みます。
作業手順に沿って見ていきたいと思います。
桟木の原寸図作成
まず、斜め桟木の原寸図作成です。

斜めに加工する桟木は4種類あるため、それらを1枚に納めていきます。
これは私が上司に教わったやり方であって、あくまで一例です。

見たままですが、初めに2Dの方の桟木の原寸を求めます。
画像の手前の桟木になります。
これは簡単で水色の線を寸法通りに書いて、赤い線を測るだけです。

次は画像奥の方の3D桟木(2方向勾配)ですね。
新しく緑の線を描き、それと2Dの赤い線を利用して橙の線の寸法を測ります。
3D桟木は各辺同じ長さなので、これで長さがわかりました。
ここまではわかりやすいですよね。
後は、どのくらいの傾きで桟木を切るのかを割り出したいわけなんですが、これが結構難しい。

最終的に欲しいのは黄色の△です。
そのためには先ほどできた赤と緑と橙線に囲まれた△を白い矢印のように正面から見ます。
赤い▲の斜辺がわかれば行けそうですよね。
なので初めの桟木にできている青い▲から等しい長さをコピーします。
そして赤い▲を作ってあげさえすれば、頂点から桟木のセイの寸法で平行に引いた線(50mm)に向かって垂線を引くだけです。
さらに、垂線とセイの線の交点から桟木のヒラの寸法で平行に引いた線(25mm)に向かって水平線を引けば必要な要素はすべて揃います。
後は寸法を測って書き入れ、見栄え良くするために残りの線を引いていきます。
今説明したのが4種類のうちの2種類で、もう二つは同じ作業だけど寸法違いになります。

完成形です。
ここまでで10分〜20分で終わらせると余裕があります。
墨付け
ここからは下ごしらえです。いわゆる加工ですね。
墨付けからやっていきます。
墨付けから切断には戻っては行けない説があるのでそれを考慮します。
試験で配布されるコンパネは9mm厚の900×1800が2枚です。
その2枚から型枠施工図で読み取った形に墨をつけていきます。
私は会社の先輩方が残してきた割付があるのでそれを暗記してしまいました。
問題が長らく変わっていないのでこういうところは楽できますね。
もちろんどの寸法がどこに対応しているのかは理解しています。
割付は自由ですが、あまりに適当にやると材料が足りなくなるかもしれません。
特に面倒なのは面取りがあることです。

斜めに取り合う部分のコンパネは断面も斜めにする必要があります。
適当な勾配ではうまく組み立てられないので、墨付け段階で目安になる墨も書いておきます。
これが厄介で外向きに勾配をつけるのか、内向きにつけるのかをうっかり間違えると終わります。
墨付け工程は最も重要で、どれだけ加工技術があってもここを間違えていると普通に落ちます。
先輩方の話では面取りのための墨で切ってしまったため落ちた。とか
100切りで寸法を出していたら100間違えて落ちた。とか
そのような事例が多い印象です。
桟木も墨付けする必要がありますね。
普段の業務での加工であれば、桟木は5mmとか短く切ってはみ出ないようにするかと思いますが、試験では可能な限りピッタリを狙います。
そのためにまっすぐ切るだけの桟木も断面が矩(カネ)になるように墨を回します。
そして前段で作成した桟木の原寸図を元に斜めの墨もつけていきます。
桟木の断面寸法にはムラがあるので小口からの距離だけで斜めの寸法を出すとあまり正確じゃないことがあります。
なので私は小口からの距離でポイントを出した後に、差し金を用いて勾配が許容範囲か確かめていました。
初めから差し金でよくないか?と思うかもしれませんが、あえて2種類の方法で確認することでミスを防ぐ考えです。
ちなみに桟木の切断には丸ノコが使えないので手鋸で切ります。
手鋸はかなり薄いので墨を二重にはつけません。
ピッタリを狙うと話しましたが、はみ出ると本当に面倒なので、刃一枚だけ猶予がある感じです。
切断
コンパネと桟木の切断です。
コンパネの切断は丸ノコでできるので特段難しいことはありません。
定規系の道具は使えませんが丁寧にやれば問題ないです。
ウマをいちいち置きなおすのが手間なので、型起こし台も利用しながら切っていきますが、型起こし台を切らないようにだけ注意します。
コンパネで苦労するのは面取りです。
鉋でひたすら削っていきます。
大工が見たら卒倒する勢いでゴリゴリと削っていくので忍びないです。
墨を目安に勾配をつけていきますが、出来型寸法の面を削り取らないように注意します。
個人的なコツですが、「もういいかな」と思ってからもう1、2回削ってあげると、後々組み立てやすいです。
桟木は丸ノコを使えないので手鋸です。
墨を回したので、2本ともよく見ながら切っていきます。
3D勾配のついている桟木は、2D桟木を切った時に出た三角の端材を使うととてもやりやすいです。
切断は間違えたくないので焦らないことを意識していました。
時々スケールを出し、墨が間違っていないか確認してから切ると安心ですね。
問題文より引用すると、型枠の組み立て作業は下ごしらえが終わってから行うこと、とされています。
つまり次工程以降、下ごしらえにかかる作業をすることは減点対象なので、工程を進める前に忘れ物がないか必ず確認します。
組み立て
いよいよ組み立てです。
長い。長すぎる。
この時点で3時間前後でしょうか。
鉄筋技能士なら組み立てからのバラし終わって、一息ついている頃でしょう。
でもここまで来ればあとは難しくありません。
問題文によると、”組み立て”は枠の釘打ちからです。
枠の釘打ちで気をつけることはありません。
強いて言えば、通常業務ではコンパネ端から桟木を少し引っ込めますが、試験では面を合わせる感じで打ちます。
気をつけることとは違いますが、試験会場で釘をスムーズに打てていないと少し恥ずかしいと思い、片手で次の釘を構えられるようにはしました。
釘打ちが終わったらすぐに建て込みに入ります。
建て込みも特段難しくありません。
ただし加工が甘いと枠の隙間が空いてしまい、顕著だと減点対象のようです。
子墨はあらかじめ打たれているのでそれに合わせて建てていきます。
ベースの法面は450×459の枠を立ててそれによりかけながらやると楽です。
上司に教わりました。
斜めの取り合いは65釘をがっつり打ち込んでおきます。
そうしないと気づけば空いてきていて、その後の建て込みに影響します。
斜めの取り合いは特に緩みやすいので、釘を両側から交互に打っておきます。
こうする方が打ち込む時に開きにくい気がします。
梁・柱型の枠を組み立てる時に法面部分と固定するので、法面の枠どうしが開いていないかよく確認してから固定します。
気がつくと開いています。なんで?
組み立てはこれで完成ですが、開きどめも必要です。
本来のベースを半分に割ったような課題であるため、片側が開いています。
そのため半貫で開きどめをします。
これは打ち込んでから切ってもいいそうなので、忘れていても焦る必要ありません。
私は一応あらかじめ切っておきます。
開きどめがついたら、最後に筋交いを入れます。
現時点では水平垂直の固定しかないので横から押すと歪んでしまいます。
もし仮にここにコンクリートを打ったら傾いたものが出来上がります。
そこで斜めの要素を入れて傾きを垂直に固定していきます。
開きどめに芯墨の真上に印を出して、下げふりを垂らします。

下げふりと墨が合うような位置で斜材をつければ動かなくなります。
これで完成です。
お疲れ様でした。
結果発表予定
令和6年度の型枠技能士試験の結果発表は、鉄筋技能士と同じく3月14日になります。
ちなみに技能検定は様々な業種がありますが、どの業種も1年間で前期と後期のどちらかに分けられています。
今回受けた型枠と鉄筋は後期の試験になります。
後期の試験の結果発表は統一して3月14日ということですね。
こちらの試験は割と自信ありです。
結果が待ち遠しいですね。
今回は以上です。ご安全に。
P.S.試験について思うこと
この試験で実際の型枠作業に必要な能力を問われているのかというと、よくわかりません。
型枠で重要なのは建て込みではなく、養生(締め固め)だと思うので。
こんな言い方はあれですが、建築大工技能士のお試し版のように感じてしまいます。
製作しているものは間違いなく型枠なのですが、桟木を斜めにカットしたりコンパネにカンナをかけたりするのは実務ではむしろ減らしていくべきです。
重要なのは出来上がったコンクリートであり、打ち放し仕上げでもない限り正しい寸法で出来上がりさえすれば取り合いなどは自由です。
また、型枠の外側の桟木が伸びていようが、少し短かろうが正しく締め固めができていれば問題ありません。
試験の中に締め固めがないため仕方ありませんが。
一昨年くらいから試験で充電丸ノコが使えるようになり、かなり易化しました。
それまでは手鋸で切っていたんですよね。
諸先輩からは冬なのに汗かくほど一生懸命切らないと間に合わないと聞きました。
充電丸ノコのおかげで汗ひとつかかずに試験を終えたのでなんだか申し訳ないです。
でも実務でコンパネを手鋸で切るなんて事まずないです。
試験内容は何年も前から変わっていないようで、寸法すら一緒らしいです。
伝統としてはいいと思いますが、対応力などは求められない試験ですよね。
その当時は丸ノコやインパクトなどが普及していなかったのでしょうが、誰もが当然のように使っている機械は使用できるようにして締め固めも試験に含んだ方が型枠らしいですよね。
何ならラチェットとホームタイスパナ使ってでも締め固めした方がいいと思います。
まだまだわかってないことだらけの戯言でした。


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